憩いの家には、ここに暮らす客人と音楽(芸術)を共有できる空間がいくつもある。
まず、館のメインエントランスを入りすぐ右手の短い階段を上ると、通路、左手の壁に大きく組み込まれた石碑が目に入る。作曲家、ヴェルディのブロンズ(ロドヴィーゴ・ポリャーギ作)の横顔とともにすべての作品名が年代順に刻まれている。その真向いから続く二部屋が博物館になる。作曲家の遺品や時代を物語る調度品などが部屋に分けられて置かれている。
中でもいくつかの絵画は興味深い。もちろん二部屋しかないので、有名美術館ほどの数を陳列してあるわけではないのだが、ヴェルディの思いのこもった、より魂のこもったものばかりであろう。
まず目に飛び込んできたのは横長の一枚。
表題の「取り憑かれた人々とキリスト」はヴェルディ自らが他の誰よりも気に入っていた画家、ドメニコ・モレッリの作品。
画家とは20年ほどの親交(1856年、ナポリのサンカルロ劇場で行われた“シチリア島の晩鐘”の上演に感銘を受けたモレッリが同作を描いたことに交友の発端)がありながらも作品の入手までにかなり難航したこともあり、当時、ヴェルディの暮らしていたサンタ・アガタの邸宅にこの絵が届いた時にはこどものようにはしゃいだという記録まで残っている。
同じ部屋の対面に掲げられたティツィアーノ作「ウルビーノのヴィーナス」は、もちろんレプリカ(オリジナルはフィレンツェのウフィッツィ美術館所蔵)ながら、オリジナルに勝るとも劣らないほどの精度もって描かれており、創作された時代(18世紀末)を考えてもその価値は高い。
官能的なヴィーナスの視線は柔らかくも痛く、そのプロポーションからは女神ならぬ人間的な温もり、そして全景からは緩やかな時間の揺らぎを感じとることができる。瞬間的な写実を捉えたかのような向かい側のキリストの啓示的なものとは対極をなす。晩年まで過ごしたこの田舎の邸宅に両絵画を手に入れた頃にはもうすでにイタリアを代表する作曲家としての地位は築かれていたが、生涯、どのような面持ちでこれらを眺めていたのであろうか。
これらの部屋にはヴェルディの死の場面を瞬間的に捉えた絵とデスマスクも置かれている。
デススケッチは、20世紀当初活躍していた画家、カルロ・ストラリャーティの作品。いくつかのデッサンも残されているが、現在は綿密に描かれているスケッチ(油絵)だけが展示されている。
一方、デスマスクは彫刻家、ルイージ・セッキにより造られたもの。ヴェルディの決して安らかとは言えない死の表情は、部屋の窓際のアングルに測られたように納まっている。この作者の現存する作品は意外と少なく、ここ憩いの家に置かれている作曲家、アッリーゴ・ボイト像を含めて僅かである。
堂満尚樹(音楽ライター)
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